川崎市麻生区の心療内科・精神科|新百合ケ丘こころのクリニック|マイタウンコラム

マイタウンコラム

こころの中のひとびと 2016.12.05

こころはそれ自体が世界をなしています。中にはひとの他、魔物など、さまざまな生き物が住んでいます。これがよくわかるのが夢で、登場するひとびとの話から、そのひとのこころの在り方がわかることがあります。その中でも実際の世界の両親とは一応別の、こころの中の両親と自分との関係はひとの生の質を決定づけます。
ある女性は、自分は生きる意味がない、早く死にたいと嘆き続けていました。治療の末、彼女は昔海で溺れて行方不明になった祖母の夢を見ました。検討した結果、この祖母は、彼女がこころの中で殺して放置した内的母親を表していました。こころの奥底に抱えていた実在の両親の関係に対する嫉妬・羨望から、彼女はこころの中の母親を殺し、その罪悪感に苦しみ、さらにこの死んだ内的母親と自分を同一と感じ、生きていると感じられずにいたのです。この洞察を経て、彼女は生きる実感を回復していったのでした。

(マイタウンコラム2016年12月号より)