息が苦しい、動悸がする
息ができない、酸素が入ってこない、苦しい、というのは、本当に恐ろしい体験です。
窒息の恐怖は人間にとってかなり根深い恐怖かもしれません。空気を取り込もうと必死で息を吸おうとして過呼吸症候群になってしまうことも少なくありません。
急にドキドキする、というのもやはり恐ろしい体験でしょう。胸のあたりが痛い感じがすることもあります。心臓が止まるのでは、心筋梗塞では?と恐怖に襲われます。
こうして死ぬのではないかと恐れ、焦り、救急車を呼ぶことになりますが、病院に着くころにはけろりと苦しさは消えてなくなっています。検査をしても「何もありません」と言われ帰宅します。「狭心症」と診断されることもありますが、よくお聞きすると典型的な狭心症の症状と少し違っていたりします。
そして、おさまったと思ってほっとしていて、また同じことが起きるのです。
こういう発作性の症状をパニック発作と呼びます。
発作を繰り返すと「また急に同じ発作に襲われるのでは」と絶えず心配するようになります。次第に外出範囲が狭まり、重症では抑うつの症状が出てくることもあります。
パニック発作は、呼吸や心臓の症状とは限りません。
めまいがしたり、「血の気が引く感じがする」とおっしゃるかたもいます。
消化器の症状として現れると、急に吐き気がしたり、下痢が生じることもあり、いわゆる「過敏性腸症候群」と呼ばれる症状が起きます。
いずれも内臓の病気ではなく、自律神経が急激に乱れて生じる症状なのです。
そして、いずれも強い恐怖感、とくに死の恐怖を伴います。
死なないとわかってきても独特の耐えがたい不快感に襲われます。それでまた発作が起きるのではないか、と心配になりやすくなりますが、この心配、不安により自律神経が乱れ、ひいては発作が起きやすくなるのです。
パニック発作を中心とする病気にパニック症(パニック障害)があります。
しかし、パニック発作がおきるのは必ずしもパニック症に限りません。
おおむね仕事そのほかで大きな負担を抱えていて、限界を超えている状態となっていることが多いようです。
パニック発作で受診されるかたには、すでに抗不安薬が処方されていることが多いようです。最初は抗不安薬がとてもよく効いて嘘のように症状がなくなることも多く、重宝する薬です。
しかし抗不安薬を飲み続け、次第に効果が薄れてきてから、紹介されてくることも少なくありません。
抗不安薬には睡眠導入剤と同じく「常用量依存」と呼ばれる依存性があります。
また抗不安薬が効きにくい場合や、抗不安薬の処方が好ましくない場合もあります。
長期に服用すると、かえって情緒不安定になるかたもいらっしゃるのです。
国際的には不安に対する処方の標準はSSRIと呼ばれる薬剤です。
ほかにも選択肢はあります。
こじらせないために、専門家による適切な薬物療法と、薬以外にも、発作をどのように受け止めて、どう対処するか、どのような生活を送るのがいいか、相談がとても大切です。