川崎市麻生区の心療内科・精神科|新百合ケ丘こころのクリニック|不安だ 落ちつかない 緊張する

不安だ、落ちつかない、緊張する

不安だ、落ちつかない、緊張する

昔、精神科の研修を受けたころ、面接で「不安」ということばを使ってはいけない、と教わりました。
不安は、さまざまなこころの悩み、痛みの中核にあるものです。つまり、「不安」は心療内科医、精神科医にとって高度に抽象的で専門的な概念です。ですから面接でそのような専門用語を使ってはいけなかったのです。
しかし、最近は、自ら「不安です」、とおっしゃるかたが増えました。不安は日常用語となり、非常に便利なことばです。不安のひとことでいろいろな気持ちがいい表わせてしまいます。
ですから、不安、と話されると、かえってそのかたの悩んでいる「不安」がどういうものなのか、わからないままになります。そのため「その不安ということについて、もう少し詳しく話していただけますか?」と質問させていただくことになります。くわしく話していただけると、さらに悩みが理解できるのです。

不安と言えば、多くはなにかを「心配」することが含まれます。「将来が不安」などです。だれにでも心配ごとはつきものです。それを解決してものごとがうまくいくことも多いでしょう。
しかし心配にとらわれすぎると、毎日が苦しくなります。失敗を恐れすぎるとかえって失敗してしまうことがあるように、心配し過ぎて、知らずに自分で悪い結果を招くことをしてしまっていることもあります。心配をめぐるこころ模様は、案外複雑です。

不安が、さまざまな不愉快な身体感覚を伴っていることがあります。
「落ち着かない、緊張する、ふるえる」は一般的によく聞かれる症状です。「いらいら」もこの中に入るでしょう。息が苦しくなったり、どきどきしたりすることもあります。緊張するとトイレに行きたくなったり、おなかが緩くなってしまうこともあります。
つまり不安は、単に気持ちの問題だけでなく、身体、神経、とくに自律神経を巻きこんでいるのです。「こころのクリニック」は、本当は「こころとからだのクリニック」なのですね。

不安はある程度薬で軽くすることができます。世界標準で一番使われているのはSSRIと呼ばれる薬です。抗不安薬もよく使われますが、依存性がありますので、どのように使うかはよく医師と相談する必要があります。ほかにもいろいろな種類の薬があり、不安の性質にあったものを選ぶ必要があります。
認知行動療法は不安に向き合いながら、そのとらえかた、対処法を磨いていくものです。
不安はひとにとって単に悪いものだけとは限りません。こころが自分を見直すよう促しているのかもしれません。急がば回れ、長い目でみると、自分や自分の不安をじっくり見つめることで、すこしこころが自由になるかもしれません。「目の前の風景の見え方が以前と違う」、精神分析的精神療法を終了するとき、長い間苦しんで来られたかたはそうおっしゃいました。